製本実績

『旅の心を取り戻す』

発行所:有限会社七月堂 様
上製本/PUR 無線綴じ
A5 変型判(T148 ㎜×Y138 ㎜)/88 頁

東京の出版社、七月堂様から発行の詩集です。著者・柊有花様が描かれたイラストが目を惹く、手のひらサイズの小さな本。一見コンパクトに構成された、しかし細部には丁寧にこだわりを詰め込んだ一冊になりました。

\印刷からお受けしました/
表紙/用紙:ハーフエア ヘンプ/墨印刷+マットニス
本文/用紙:HS 画王/墨+金刷
帯/用紙:OK カイゼル なのはな/特色刷
見返し用紙:OK ミューズキララ ブラック

ハーフエアを用いた表紙は、紙が持つ柔らかな風合いが印象的で、金箔押しのタイトルがキラリと光ります。花の「やく」に押された金箔は、印刷された装画の「やく」と、ひとつひとつ位置がきれいに重なるよう、調整しました。

上製本の表紙は、芯紙に貼る際に僅かなズレが生じ、どうしても個体差が出てしまいます。そこにミリ単位で、完璧に箔位置を合わせるのは至難のわざ。そこで今回は、芯紙に貼る前に箔を入れることにしました。すべて寸分のズレもなく…とはいきませんが、できる限り装画ぴったりの位置に合うよう工夫して仕上げました。

一冊一冊、手作業で押したもの。もしお手に取る機会がありましたら、出会ったその一冊の箔押しを味わっていただければ、幸せに思います。

本を開くと、詩に添えられた挿絵は、すべて金インキの印刷で表現されています。繊細な濃淡としっとりとしたきらめきが印象的です。本番前に本紙本機校正を行い、弊社担当も実際の印刷に立ち会いながら配慮するポイントを確認。お客様に色の出方を確認いただき、本番印刷でも金色がご希望どおりの発色になるよう配慮し、進行しました。

金や銀などのメタリック系のインキは、使う用紙との相性もあり、思い描いた印象になるかは難しいのですが、今回は真鍮のような奥行きある色に仕上がってくれたのではないでしょうか。

そして今回、実績を掲載させていただくにあたり、著者の柊有花様と、装幀をご担当された川島雄太郎様からコメントをいただきましたのでご紹介いたします。

\著者・柊有花様より/
旅をテーマにした本なので、持ち運びできて、触り心地がよいものをと本書のデザイナーさんとお話しし、仕上げていただきました。ずっと長いあいだ「上製本で箔押しが施された本が作れたら」と考えていたのですが、実際にその仕様で作られた本を手にしたとき、その端正なうつくしさに心ときめきました。わたしの人生において大切な一冊です。ありがとうございます。

\装幀担当・川島雄太郎様より/
「上製本カバーなし」という製本方法ならではの物質感をさらに際立たせるために、 装画の花の葯の部分に箔を重ね、奥行きが出るように工夫しました。本文の装画は、詩篇をほのかに照らすような落ち着いた金色に。美しい本に仕上げていただき、たいへん感謝しております。

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嬉しいお言葉をいただき、ありがとうございました。
『旅の心を取り戻す』は、各取扱店でお求めいただけます。ぜひお手に取ってみてください。

*『旅の心を取り戻す』(七月堂様 WEB サイト)
https://shichigatsud.buyshop.jp/items/91464881