画家、イラストレーターとして活躍する
林青那氏の作品集『KUROMONO』。
墨で描かれた力強い作品を、
大判の上製本に仕上げました。

印刷には「トリプルブラック」という
手法が用いられています。
プリンティングディレクターを担当されたのは、
山田写真製版所の熊倉桂三氏。
印刷界では有名（レジェンド！）な方で、
ご存知の方も多いと思います。

濃度と階調の異なる３つの版を用いて、
それをすべて黒（墨）で３度重ね刷りすることで、
作品が持つ大胆で細やかな表情を再現しています。

製本は、「PUR背巻」の上製本で仕上げました。
見開きにも黒ベタの印刷があるため、
「糊上がり」や「ブロッキング」を防ぐためです。

糸かがり上製本の工程では、
ボンドでの下固め（仮固め）が必要ですが、
その糊は、ヒーターで強制乾燥されます。

見開きにベタの印刷がある場合、糊がつかず、
糸かがりの穴から糊が浸透しする「糊上がり」や
印刷面を剝いでしまう「ブロッキング」に
つながる可能性があります。

それを防ぐため、並製本用ラインで用いる
「PUR」接着剤を、今回は使用しています。
「PUR」は、空気に触れることで固まるため、
ヒーターでの乾燥が不要で、「糊上がり」や
「ブロッキング」が発生しにくくなります。

「PUR」接着剤を用い、背部分のみに
裏打ち寒冷紗を巻く「PUR背巻」の仕様を
今回の製本では採用しています。

また、表紙の「箔押し」にもご注目ください。
艶のある黒箔で、表紙の全面に施した箔押しは、
存在感を高めつつ、筆跡まで感じられる
繊細な仕上がりです。

本作品は「第63回 全国カタログ展」図録部門にて、
「実行委員会奨励賞」を受賞しました。