『長野ADC年鑑 2019』
長野県内で活動しているアートディレクターが
手がけた作品の中から、審査で選ばれた
受賞・入選作品が掲載されています。
作品は、どれも魅力的なデザインで、
眺めているだけでも想像が広がりますが、
この本自体も、面白いデザインになっています。
まず目を惹くのが、型抜き加工した表1の板紙です。
チップボールに、PP加工したコート紙を合紙し、
型で抜いて、それを一冊一冊手作業で貼っています。
これは、表紙に板紙を貼る「ドイツ装」という装幀です。
(*通常のドイツ装は、表4にも板紙を貼ります)
表紙にも一部、型抜き加工を施してありますので、
その部分が、板紙の抜き部分とぴったり合うよう、
丁寧に貼り合わせています。
形が合わさった切り込み部分からは、
見返しのクラフト紙がのぞき、
印刷文字がちょうど見える設計に。
また表紙の箔押しも、ちょっと変わっています。
「浮上空押し」(うきあげ からおし)です。
当社でお受けしている通常の箔押しは、
「凸版」で箔を圧着するため、
加工部分はへこみます。
今回は「凹版」で加工しているため、
加工部分は、文字が浮き上がって見えます。
加工には、「マグネ凹版」と「樹脂凸版」の2種を使い、
その2つの版の間に表紙用紙を挟んで、圧をかけ、
盛り上がって膨らんだような、箔押し加工に仕上げました。
文字に手で触れてみたくなるような、
「紙」ならではのデザインです。
ところで、写真をご覧になった皆様、
表紙の板紙は、ただの変わった
幾何学模様だと思っていませんか?
実は、ある「文字」を表して、型抜きしています。
ヒントは、書名に含まれている二文字です。
「見えた」時の嬉しさは、きっと誰かに話したくなるハズ。
どうぞ、じっくりとお楽しみください。