『西村 穣・自選画集』
著者の方が、医学生の時代から
数十年も描き続けてきた絵を、
一冊にまとめた画集です。
パリの街並み、ギザのピラミッド、
葡萄や洋梨、庭の花々など、
多彩なモチーフが描かれています。
本文用紙には、A判<86.5kg>と
厚みのある用紙を用い、どっしりと
重厚感のある仕上がりに。
束の厚みもある本ですが、
表紙のくるみに「ホローバック」を
採用しているため、開きが良く、
どの頁の絵もしっかりとご覧いただけます。
「ホローバック」とは、表紙と中身の接合を
表紙のミゾと見返しのみで接着するため、
背の部分に空洞ができ、本の開閉が容易なつくりです。
印刷も弊社でお受けしています。
原画の色ぴったりに近づけるのは
なかなか難しいのですが、
プルーフ(色校正)を元に
お客様からのご要望をお聞きし、
印刷オペレータが一枚一枚の絵を
確認しながら、色を調整して仕上げ、
著者の方にも喜んでいただけました。
また後加工では、当初、お客様のご希望で、
表紙に印刷した額縁のラインにぴったり合わせて、
箔押し機で「空押し」をしたいとのことでした。
印刷した絵画が立体的に見えるデザインになります。
しかし、空押しをするには、印刷表紙を
先に芯ボール紙に貼り合わせる必要があります。
空押し加工をして、表紙に凹凸ができた後だと、
膠(にかわ)が浮いてしまい、表紙と芯ボール紙が
きれいに貼り付かないからです。
ただ、芯ボール紙に貼った後は、どうしても
表紙サイズに、1~2mm前後の誤差ができます。
そうなると、印刷した額縁ラインに
ぴったり空押しを合わせるのは難しい仕様です。
そこでお客様にご相談し、額縁から3mm程度外側に
空押しをすることになりました。
とはいえ、ミリ単位の調整が必要。
印刷と空押しの枠がズレないよう
熟練の職人技で調整し、印刷した絵が、
空押しの枠に見事収まりました。
立体的で、情感のある表紙は、
箔押しで彩った金の題字と合わせ、
落ち着いた美しさに仕上がりました。
描かれた絵もずっと美しく息づくような
思い出の一冊となれば幸いです。